スイスフランはスイスが発行している通貨です。
スイスフランを発行しているスイスは永世中立国という立場なので、地政学的リスクが高まった時に資金の避難先として利用されるケースが多いです。
2001年に米国で発生した同時多発テロ事件ではスイスフランが多く買われる事になりました。
上記の様にスイスフランは中東問題が激化した際に上昇する特徴を持っています。
今回はスイスフランの今後の見通しについて詳しく解説していきます。
コロナショックからどのような立ち上がりを見せているのか、政策金利によって受ける影響はあるのか、分かりやすく説明するので必見です。
これからスイスフランに投資しようと考えている人や、スイスフラン円での取引を検討している人は参考にしてください。
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このページのもくじ
スイスフランのリアルタイムチャート
スイスフラン円のリアルタイムチャートは下記の通りです。
スイスフランに大きな影響を与える指標
スイスフランは米ドルと同じ様に、経済指標や要人発言によって大きな影響を受けます。
これからスイスフランに大きな影響を与える指標を紹介します。
スイスフランの動向をチェックするには必須の指標なので、覚えておきましょう。
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SVME購買部協会景気指数
SVME購買部協会景気指数はスイス購買部協会が企業経営者・購買担当者に新規発注・仕入れ価格などをアンケート調査して結果を数値化している指標です。
【2021年】SVME購買部協会景気指数 | |||||
---|---|---|---|---|---|
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
59.4 | 61.3 | 66.3 | 69.5 | 69.9 | 66.7 |
50を起点に、50より上回ると景気が好調で50より下回ると景気が不調ということがわかります。
SVME購買部協会景気指数は月の初旬に発表されます。
貿易収支
貿易収支はスイス連邦統計局が公表している、スイス輸出から輸入を差し引いた数値です。
スイスは貿易国としても有名で長年貿易黒字を維持しています。
【2021年】貿易収支 | |||||
---|---|---|---|---|---|
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
5.054B | 3.699B | 5.816B | 3.837B | 4.948B | ー |
GDPの大部分が輸出を占めている点から、スイスの貿易収支は非常に重要な指標です。
貿易収支の黒字幅が大きければ大きいほど、スイスフランの価格も向上します。
スイス中銀行政策金利発表
スイス中銀行政策金利発表はスイス中央銀行が政策金利の発表をする要人発言ジャンルで、政策金利以外にも為替介入や通貨政策の具体的な考えなどを公表しています。
【2021】スイス中銀政策金利 | |||
---|---|---|---|
2021年第1四半期 | 2021年第2四半期 | ー | ー |
-0.75% | -0.75% | ー | ー |
【2020】スイス中銀政策金利 | |||
2020年第1四半期 | 2020年第2四半期 | 2020年第3四半期 | 2020年第4四半期 |
-0.75% | -0.75% | -0.75% | -0.75% |
スイス中央銀行の影響力は大きく、永世中立国として独立していることから金融政策を他国と合わせる必要が無く国際的に批判されるケースもあります。
スイスフランでの投資は、中央銀行の動向が重要です。
スイスフラン円の過去のチャート推移
スイスフラン円の2020年チャート推移を見てレート変動を分析していきます。
日本円は世界でも3番目に取引量の多い通貨で、スイスフランと円はどちらも安全資産扱いされています。
為替市場が不安定になった時に両方買われる傾向があるので、スイスフラン円は大きな暴落が起きにくい通貨ペアです。
過去のレート変動から今後の見通しを考察していくので、2020年にどのような影響で変動したのか確認しましょう。
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2020年前半は新型コロナウィルス感染拡大の影響で下落
スイスフラン円は2020年前半に発生したコロナショックの影響で下落傾向になります。
しかし米ドル円や豪ドル円のような暴落傾向ではなく緩やかな下落で収まり、両通貨安全資産として機能していることが顕著に現れます。
新型コロナウィルス感染拡大の影響でFOMCの緊急利下げが行われ、ドル円は急落する状態でしたが、スイスフラン円の下落は限定的でした。
2020年中盤は各国の金融緩和が安心材料に繋がり上昇
2020年の中盤から、新型コロナ感染拡大を抑止する政策によって警戒感が薄れはじめ、各国の金融緩和が投資界での安全材料として働き、株価市場の下落は止まりました。
7月21日に返済不要の補助金39000億ユーロ・低利融資3600億ユーロ、総額7500億ユーロがコロナショックで影響を受けた人達の復興基金として設立され、欧州連合で合意されました。
上記の政策によりユーロ圏の株価が高騰し、スイスフラン円もつられて上昇していきます。
2020年後半は米国大統領選挙やワクチン開発成功の影響を受けていない
2020年後半は、新型コロナウィルスの第二波の懸念や米国大統領選挙によって相場が荒れる可能性が高いと判断する投資家が多く、警戒感の強い相場になりました。
米国大統領選挙で就任が決定したバイデン氏ですが、トランプ大統領が不正を訴え、米国が混乱状態になってしまい米ドル上値が重たい原因になりました。
しかしファイザー社の新型コロナウィルスワクチン開発に成功したことによってNYダウの高騰とリスクオン市場への切り替えが始まりました。
スイスフラン円は特に大きな影響を受けることなく、2020年の最高値を更新することはありませんでした。
【2021年】スイスフラン円の今後の見通し
スイスフラン円の今後の見通しですが、スイスフランと円は両方安全資産であることから、大きな暴落・高騰の可能性は低いでしょう。
レンジ相場からの脱却によって大きなトレンド発生する可能性があるので、ファンダメンタルズ分析よりテクニカル分析を重視した方が良いタイミングでエントリーできる可能性があります。
金利差の影響を受けていない観点からファンダメンタルズ分析が難しい
ファンダメンタルズ分析では、国の経済格差や政策金利などを重視しますが、スイスフランと日本は国の歴史が長く経済成長を強く望むような状況ではありません。
政策金利においても、日本は2016年にマイナス金利を導入しておりスイスフランも2015年からマイナス金利を導入しています。
現状の金利差が相場に大きな影響を与えていないため、スイスフラン円の見通しを考える時は各国の経済格差ではなくレート推移の分析をした方が正確に判断できます。
地政学リスクと資産リスクに着目してスイスフラン買い・円買いを見極める
政策金利や経済状況で為替変動が動かないといっても、リスク面に着眼していくとレート変動を予想することができます。
円とスイスフランは両方安全資産ですが、市場に影響するリスクの違いによってスイスフラン買い・円買いが決まります。
市場でのリスクは地政学リスクと資産リスクがあります。
紛争や戦争などでのリスク「地政学リスク」が高まった時は永世中立国のスイスフランが上昇し、「資産リスク」が高まる相場では円が上昇する確率が高いです。
ユーロ円との連動性で見極める
スイスフラン相場は、スイス中央銀行が対ユーロ相場でのスイスフラン高を避けるために市場介入をおこなっています。
よってスイスフラン円はユーロ円と連動性が高い通貨ペアになっています。
スイスフラン円とユーロ円のチャート推移を比較すると同じような動きで推移していることがわかります。
レンジ相場から底堅さを形成する流れになる
スイスフラン円は2021年5月を起点としてレンジ相場を抜けています。
2021年7月まで上昇トレンドが継続していますが、前回の安値ポイントでレンジ相場が再び始まっています。
レンジ相場でのサポートライン反発が強く、底堅さを形成しているので、徐々に上昇していく可能性があります。
【2021年】各金融企業・メディアのスイスフランの見通し
各金融企業やメディアのスイスフランの見通しを紹介します。
全体的に横ばいが続く相場を予想しており、新型コロナウィルス感染拡大によって再び世界経済を揺るがす事案が起きなければ、横ばいになる可能性が高いと予想しています。
ロイター通信はアナリストの63%が横ばい予想と報告
ロイター通信はスイスフランの対ユーロ相場の今後6ヶ月の方向性についてアナリストの見解を報告しました。
クレディ・スイスがドイツの欧州経済センター(ZEW)と共同で実施した5月のZEW投資家信頼感指数の調査に参加した40人のアナリストのうち、およそ半数がユーロ/スイスフラン相場は横ばいで推移すると予想した。
クレディ・スイスによると「残りの回答者の約半分はスイスフランの上昇を予想し、約半分は下落を予想した」という。
この調査結果は、為替相場の安定性に対する信頼が揺らいだことを示すと同行は指摘する。先月の調査ではアナリストの63%が横ばいと予想していた。
(引用:ロイター通信)
アナリスト達はスイス経済が6ヶ月で改善する可能性があると見ておらず、4人中1人しか改善すると答えていません。
ユーロに対するスイスフランの強さは輸出に依存するスイス経済の懸念材料となっています。
インヴァスト証券は底堅さから上昇予想
インヴァスト証券は、スイスフラン円をファンダメンタル的要素よりテクニカル面から分析をすすめています。
揉み合い気味の展開の中、モメンタムからは底堅さが想定されることで、今年の想定レンジを、112.00~125.00とします。
(引用:インヴァスト証券)
スイスフラン円の底は固く、徐々に上昇していく予想ですが、押し目買い戦略で注意するポイントがいくつかあると記述しています。
株価の変動によって円高気味になるケースもあり、8月中旬の円高アノマリーに注意しておくことを指摘しています。
代表的なスイスフランの通貨ペア
スイスフラン円の見通しをメインに紹介していきましたが、スイスフランには他にも代表的な通貨ペアがあります。
スイスフラン円以外の通貨ペアは経済や金利政策によって影響を受けることもあるので、スイスフラン円以外の通貨ペアで取引したい人は参考にしてください。
ユーロスイスフラン
ユーロスイスフランは、スイスがスイスフラン高を望んでおらず市場介入している特徴を把握しておきましょう。
ユーロは世界で2番目に取引の多い通貨で、スイスフランは7番目の通貨です。
スイスフランは安全資産として機能しており、特に地政学リスクが高くなると買われる傾向にあります。
ユーロスイスフランはマーケットにリスクが高くなって来る時に取引する通貨ペアで、スイス政府がスイスフラン高を望んでいないことを念頭にいれて投資しましょう。
米ドルスイスフラン
米ドルスイスフランは、世界で一番取引量の多い米ドルと組み合わさっているものの、スイスフランが安全資産とされている為、米ドルスイスフランはマーケットが正常な時に注目されにくいです。
値動きは比較的小さく、マーケットが不安定になった時のみスイスフランの価値が上がりレートが下落する特徴があります。
米ドルスイスフランはマーケットのリスクオン・オフに合わせて取引する通貨ペアです。
スイスフランは今後も堅調なレート動向を見せる可能性が高い
スイスフラン円は他の通貨ペアにくらべて安定しており、レンジ相場を継続的に進んでいく可能性が高いです。
底堅さからスイスフラン円は今後大きく下落する可能性はありませんが、コロナ感染拡大によって市場が不安定になる確率も0ではないので、リスク警戒は怠らないようにしておきましょう。