エンロン事件とは2001年に発覚した不正発覚事件のことです。
エンロンは全米有数の大企業でありながら、総額160億ドルを超える多額の負債が発覚しました。
結果的にエンロンは負債を返済しきれず倒産し、世界に大きなインパクトを残しました。
不正に対する制度が変わるほどのきっかけを与えたエンロン事件をわかりやすく解説します。
大企業が倒産した理由や、エンロン事件が起きた背景・対策まで詳しくご紹介しましょう。
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このページのもくじ
エンロン事件はアメリカのエネルギー会社が原因
エンロンは1985年に創立されたガス・パイプライン事業を主としたエネルギー会社でした。
インターネットを用いたブロードバンドビジネスや電力取引もおこなうことで、業績は飛躍的に向上し大企業に成長しました。
1980年代のレーガン政権がエネルギー産業の規制緩和をおこなったことが成功の背景です。
エンロン社は金融資産から派生した取引のデリバティブ取引をきっかけに業績が急成長しました。
2001年には収入規模でアメリカ第5位にもランクインを果たし、周囲からもさらなる成長を期待されていました。
エンロンは粉飾決算で倒産
エンロン事件が発覚したきっかけは、2001年に水道・電力事業が失敗していることが世間に広がったためです。
証券取引委員会の調査対象に入ったことで、不正の隠蔽疑惑をかけられるようになりました。
証券取引委員会の調査の結果、1980年後半から粉飾決算をしていたこと発覚したのです。
信頼がなくなった影響で株価は大暴落し、2001年の年末にエンロン社が破産宣告をしたことで倒産になりました。
負債総額は所説ありますが310億ドルは下らないと言われており、当時のアメリカのでは史上最大の企業破綻でした。
エンロン事件が起きた背景
エンロン事件はエンロン社が粉飾決算をしていたことが原因であり、明るみになったことで発覚しました。
証券取引委員会の調査の結果から1980年以降から不正をおこなっていましたが、企業として成長していたことも事実です。
急成長を遂げていたエンロン社ですが、負債を抱えて粉飾決算をしないといけなかった背景はどこにあるのか、詳しく紹介していきます。
取引損失が大きく事業も失敗していた
急成長中だったエンロン社が破綻に至った主な原因は、新規拡大事業の業績が思うような成果を得られなかったことにあります。
1990年代には子会社のSPEに決算を付け替える形をとって不正をごまかしてきました。
デリバティブを抑制するために普及した時価主義会計を利用して、決算書で見かけ上の利益を増大させ、不正が横行していました。
証券取引委員会の調査が入る少し前、電力事業や水道事業が思うようにいかず、10億ドル単位で失敗していることが発覚しています。
急成長を遂げていた一方でうまくいかない事業もあったことから、順風満帆だと思われていた企業は負債を抱え続けていたのでした。
監査役が共同して不正に及んでいた
エンロン社の監査を担当していたアンダーセン会計事務所によって粉飾決算のコンサルティングがおこなわれ、報酬をもらっていました。
アンダーセン会計事務所は60年の長い歴史があるアメリカの5大監査の一つであったため、不正に加担していると思う者はいませんでした。
当時、取締役会の監督は17名中15名が外部の取締役で構成されていました。
監督のほとんどは、エンロン社から報酬を受け取って不正に加担したため、監査としての機能がまったく働いていなかったのです。
もっと早くに不正が公になるはずが、監査が不正を見逃していたことによって、公表されるのが遅くなりました。
エンロンだけでなく多くの企業の装飾決算が発覚
不正が発覚したことで企業の決算に対する監視の目が厳しくなり、アメリカの有名な企業で次々と不正会計が発覚していきました。
多くの企業で不正が発覚したことから、投資家も企業に対して信憑性が持てなくなり、株価が暴落していきました。
エンロン社は優良企業という認識があったため、株は世界中で購入されていました。
エンロン社が倒産したことによって、2万人以上の従業員が職や資産を失いました。
粉飾決済がエンロン社の1社だけに限らなったことから、制度を見直す方針を固めました。
エンロン事件が与えた影響
多くの企業で不正がおこなわれていた事実から、アメリカ政府も不正に関する対策を講じる必要があったのです。
世界規模で衝撃を与えた事件であったため、不正に関する施策は日本を含めて多くの国で考えられるきっかけになりました。
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コーポレート・ガバナンスの見直し
会社を最適に制御するという意味を持つ、コーポレート・ガバナンスの見直しがおこなわれました。
会社はだれのものなのかという観点が問題視され、企業にコーポレート・ガバナンス委員会を設置することが義務付けられました。
本来の主権者である株主に対して情報を十分に公開するようになり、会社の制度も次第に変化していきました。
株主の信頼を失わないために必要なのは、適切に情報を公開することです。
信頼感こそが、企業の存続に直結する大きな指標だと裏付けられます。
サーベンスオックスレー法(SOX法)の制定
サーベンスオックスレー法(SOX法)は、2002年にアメリカ政府が制定した企業改革の法律です。
企業の財務状況が透明かつ正確に確保されることを厳しくした制度であり、国内の3,800社と子会社に業務内容を詳しく書かせました。
プロセス・考えられるリスク・回避方法をマニュアルに記載して、インターネットを通じて文書化することを義務付けました。
法律を破ると経営者は禁固刑に課せられるなど、厳しい罰則が与えられます。
内部統制の重要性が再認識される法律として策定されたのです。
エンロン事件をきっかけに日本版SOX法が制定
SOX法はアメリカで制定された法律ですが、日本でも同じことにならないように法律が見直されるきっかけになりました。
エンロン事件から日本でも内部統制報告制度(J-SOX法)が2006年6月に制定されました。
企業が財務の報告をする際に、不正を予防するためのルールを作って徹底したチェック体制を定めた制度です。
目的はアメリカと同じなので内容も似ていますが、アメリカ企業では100,000時間を超えるほどの作業時間が必要なところもありました。
J-SOX法では、企業の監査人自身が内部の統制を手テストする「ダイレクトレポーティング」という体制をつくり、企業が担う負担を減らしました。
不正によるショックのリスクを少しでも減らすため、J-SOX法では金融商品取引所に上場しているすべての企業が対象になります。
法律に違反すると法人の場合、最大5億円の罰金が課せられるといった内容でした。
エンロン事件をきっかけに不正に対する対策が強化された
エンロン社の粉飾決算が招いた破産は、当時のアメリカだけでなく、投資者にとっても大きな衝撃を与えました。
エンロン事件があったからこそ日本にとっても不正に対する制度が見直すきっかけとなり、予防策として法律が制定されました。
日本の出来事だけでなく世界情勢にもアンテナを張ることで、今後起こりうるリスクは軽減されます。
今回はたまたまエンロン社によって問題が勃発しましたが、日本の企業から問題が勃発する可能性も十分にあります。
過去の経験を活かして、投資先の決算や経営体制の確認を欠かさずにおこなうことが、私たちの負うリスク軽減につながるでしょう。