FX取引では既にAIを実装したトレードを行うプレーヤーが登場しています。
ただ現状ではそうしたプレーヤーは個人投資家ではなく海外のヘッジファンド勢に限られており、利用成果もファンドによってまちまちの状況のようです。
足元では次のような使い方をしているファンドが殆どとなっています。
今回は、そんなFXトレードのAI利用の現状や個人のトレーダーが利用できるおすすめサービスなどを解説していきます。
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このページのもくじ
FXトレードではAIがどう導入されている?
前述の通り、近年のFX取引ではAIが導入される事例も増えてきました。
AI利用のFX取引では、多くの人がファンダメンタルズの要因やテクニカルチャートの取引サインなどの情報を広範に集めて順番付けをしその中で特定の通貨ペアが上に行くのか下に行くのかを分析しているのではないかと考えがちです。
しかし、実はAI利用では全く別のことを行って相場の先行き予測をしています。
人が裁量取引を行うときに重視する経済指標や経済状況などの複雑な材料というのは定量的に相場に影響を与えるファクターとして分析することは極めて難しいです。
また、テクニカルチャートで表示されるインジケーターなども過去のデータを利用したものであるため、的中確率が低いことからAIは一切こうした情報を利用していません。
その代わり、人が行った取引の結果としてのチャートの形状で極めて近似性の強いものを大量のデータから瞬時に探し出してくるという作業を行っているのです。
意外に思われるかも知れませんが、AI利用でのFX取引は現状ではこれが最も精度の高いトレード法になっているようです。
たとえばドル円の取引についていえば、同じFXのほかの通貨ペアのチャートの相似形を短い時間足から長い時間足まで検索するだけでなく、債券や株式、コモディティ、金などの貴金属、オイルといった幅広い商品領域からマッチングするものを探してくることになります。
こうしたやり方をしますと一時的かも知れませんが、木材の商品相場の日足がドル円よりも1日とか1か月先行していることが見つかり、それをベースにし、先行きのトレードを行うといったことが実際にされているのです。
少し難しくなってしまいましたが、簡単にまとめると以下の通りです。
FXトレードで導入されるAIの働き | |
---|---|
〇(正) | チャートの形状などを画像認識し、過去に起こった近似トレードを瞬時に算出する |
×(誤) | 大量の情報を処理して、最適な方法を割り出す |
SF映画のAIのイメージのように、自己流で人間の想定できない方法を見つけ出すようなものでは全くないことが分かります。
FX取引におけるAI導入の現状・見通し
GPUを利用したFX取引が最もメジャー
AIを利用したFX取引は現状ではその殆どがヘッジファンドなどの投資ファンド勢が利用しています。
それがコンピュータのグラフィックス処理や演算処理の高速化を主な目的とするGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)という半導体を利用してチャートの形での相似形を市場の何万、何億という商品のチャートから見つけ出して瞬時取引きするというやり方です。
現状ではGPUで非常に高いシェアをもっていて信頼度が高いのがNVIDIAのチップということになります。
この会社はソフトバンクグループからARMを買収したことでも有名になっています。
このGPUのチップは車の自動運転で人の目の代わりに映像をカメラから取得して内容を瞬時に判断して運転を行うことにも使われるため非常に注目を集めていますが、この画像取得と判断をファンドはFXにも利用しているのです。
クォンツファンドと呼ばれるところはFXのみならず40種類から50種類といった幅広い投資商品に資金を振り分けて分散投資を行っており、FXはあくまでそうした商品の一つとして運用されています。
クォンツファンドはコロナ禍で大打撃を被っている
昨年まではクォンツ主体でコンピュータが取引を行うファンドは総じて運用成績がよく、投資家からも絶大な信頼を得てきた会社が多かったのですが、今年については3月に新型コロナ起因で金融市場は大きな暴落相場に見舞われ、ほぼすべての商品の相場が大きく下落する状況となりました。
多くのヘッジファンドはリスクパリティ戦略と呼ばれる商品ごとの投資額を一定に割り振ることで、相場に大変動が起きても損失をカバーするような投資をおこなってきたわけです。
ただ、新型コロナは残念ながら須らくほぼすべての金融商品にダメージを与えることとなったため、莫大な損失を被ることとなりました。
レイダリオで有名な世界最大のヘッジファンド・ブリッジウォーターも今年の旗艦ファンドはマイナス19%の損失を出しており、クォンツ系のファンドとしては世界最大のルネッサンステクノロジーも大きな損失を出して年末に至っています。
こうしたファンド勢はFXに限った取引をしているわけではありませんが、GPUを使ってチャート形状の似通ったものを利用して先行き投資するという投資手法はいきなり岐路にぶつかることとなっているようです。
ファンド業界では来年以降はコンピュータ主導から人の裁量取引の部分がより増えることになるのではないかといった話も飛び出しています。
アルゴリズムを多用した超高速取引HFTは結果をイマイチ出せていない
コンピュータによるFX取引で注目されてるのがHFT(High Frequency Trading)と呼ばれる、いわゆるアルゴリズム取引になります。
この高速取引は専用の高いパフォーマンスを発揮するコンピュータを利用し他の顧客の取引に先回りするような形で超高速で売買を行うもので1秒間の間に数千~数万の注文を繰り返しています。
こちらは、経済指標やニュースのヘッドラインのテキストなども瞬時に読み取りますし、一定のテクニカルチャートで長い時間足から短い時間足までトレンド確認できれば、どんなに高値でも平気で買い向かうといったアルゴリズムならではの取引をおこなっています。
個人投資家の裁量取引はとかくこうしアルゴリズムによる超高速取引に翻弄されて損失出しやすい状況になっています。
しかし一見調子がよく見えるこうしたアルゴリズムの高速取引昨年後半あたりから殆ど利益を出せる短期投機筋がいなくなり、昨年末段階でも相当な数のファンドが閉鎖を余儀なくされているのが実情です。
あらゆる情報をもとに相場を先回りして売買するHFTが結局儲からないというのもかなり皮肉なものです。
10年前にこうした取引きが市場を席捲したときにはもはや個人の裁量取引にはまったく可能性がないのではないかと悲観的な声も聴かれたわけですが、リアルなマーケットでは必ずしもこうしたアルゴリズム取引もうまくいっていないことがわかります。
個人投資家用のFXサービスにAIは実装されていない
現状における個人投資家が利用できる自動売買は、残念ながらAIを実装したものは存在していません。
世界中で利用者が多いのはMT4にEA・エキスパートアドバイザーと呼ばれる予め売買ロジックをプログラム化したソフトをインストールして自動的に取引する手法で、これは世界中で利用されていますので、有償、無償を含めて通貨ペアに合わせて相当な数のソフトを手に入れることができます。
売買ロジックが相場の状況とマッチする内容になっている場合は、自動売買でも利益を得ることができるようですが、相場の流れが急変すると、AIのようにコンピュータが自ら相場を判断して売買のやり方を変えると言ったこともできなくなることから、ドローダウンも大きくなり、期待したような収益があげられなくなるのが実情です。
また国内ではMT4の自動売買と共に人気なのがリピートイフダンと呼ばれる物理的な仕掛け売買を利用した取引で、マネースクエアが提供しているトラリピに代表されるシステムトレードが人気となっています。
これは相場が上に行くか下にいくかは利用者自身が判断して相場の途上にいくつもの仕掛けを設定するやり方なので、何が起きているのかは明確に理解しやすく、また個別に損切も設定されますので証拠金管理も自在であり、国内では利用者が非常に多くなっています。
ほかの店頭FX業者も似たような仕組みを提供するところがあり、全般的に高い評判を得ている状況です。
インヴァスト証券が提供するAIトレードサービス「マイメイト」
これまでAI実装の自動売買はありませんでしたが、2020年空きにインヴァスト証券が強化学習型AIトレードサービス「マイメイト」をリリースしました。
マイメイトは最初に質問へ回答した結果により決定するキャラクター(AIエージェント)を育成するという体を取りつつ、トレーダーも学習していけるというシステムです。
コロナ禍でもしっかりプラス収益を上げられており、実績も十分信頼できると言えます。
ただ、質問によって決定したキャラクターは途中で変えることができないのがネックです。
キャラクターによってステータスや特徴が記載されているので、自分の取引の意向とは違ったキャラで設定されると取引が物足りなく感じる可能性はあります。
また、取引できる通貨ペアが以下の3種類しかないのもデメリットと言えます。
- 米ドル/円
- ユーロ/米ドル
- 英ポンド/米ドル
現時点(2020年11月)はまだリリースして間もないので、今後のバージョンアップを期待したほうが良いでしょう。
AIトレードは最強のFX取引ではない
本記事にて紹介したように、AIを利用してFX取引を行うと市場でも最強のトレードを行うことができると考えられがちです。
しかし実際は、相場の状況が一定の条件を満たしているときは確かにワークするものの、相場に大きな変化が変化が訪れた場合には必ずしも有効な取引手法ではないという現実にファンド勢ですら直面していることはあらかじめ理解しておきたいところです。