日本のGDPは世界的に見ても高い水準を維持していますが、一方で長年の停滞を懸念する声もあります。
国の経済成長率を測る指標として、GDPは重宝されます。
今回は、日本のGDPの推移と停滞の要因を詳しく解説していきます。
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日本のGDP推移
GDPには、実質GDPと名目GDPの2種類があります。
- 実質GDP:名目GDPから物価変動の要素を除いた数値
- 名目GDP:その年の市場価格で算出した数値
物価変動の影響を除いた実質GDPのほうが、その国の経済の実態を知る上では重視されます。
GDPの推移は経済成長率を如実にあらわすため、推移を確認するのは非常に大切です。
実質GDPの推移(1980年~2020年)
日本の実質GDPはバブル期に大きく上昇した後、全体的には微増を繰り返している状態です。
戦後右肩上がりに推移していましたが、バブル崩壊後の1993年に初めて前年比マイナスを記録しています。
名目GDPの推移(1980年~2020年)
名目GDPの推移は、実質GDPよりも横ばいに推移しています。
物価が上昇したタイミングでは名目GDPが実質GDPよりも高くなり、物価が下落したタイミングは実質GDPが名目GDPより高くなります。
実質GDPと名目GDPを比較すれば、デフレとインフレの傾向を確認できます。
日本のGDPはバブル崩壊から30年以上も停滞
日本のGDPは、1990年のバブル崩壊から2021年現在まで、ほとんど大きな成長を示さずに停滞しています。
緩やかに上向き推移する時期もありましたが、消費税増税やリーマンショック、新型コロナウィルスの感染拡大など定期的に経済が打撃を被る状態が続き、結果的に横ばい推移が続いています。
GDPの停滞は近年の日本経済を評価する上で重要なポイントとしても扱われ、分析の対象にもなります。
主要国のGDP停滞は日本が最も長い
国名 | 期待成長率(2019~2020年) |
---|---|
アメリカ | 1.7%~2.5% |
中国 | 6.1%~6.3% |
日本 | 0.6%~1.1% |
ドイツ | 1.6%~1.8% |
インド | 7.4% |
フランス | 1.6%~1.7% |
イギリス | 1.4%~1.5% |
イタリア | 1.0%~1.1% |
ブラジル | 2.3%~2.5% |
GDPの成長が鈍化するケースは、ドイツ、イギリス、フランスなどヨーロッパの先進主要国にも良く見られる現象です。
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ただし、約30年という長いスパンで見ると、日本のGDPは僅かではありますが下降傾向にあります。
主要国のGDP推移を比較するとアメリカ、中国の上昇率は顕著ですが、ドイツ、イギリスなども全体的に僅かに上昇しています。
日本のGDPは中国に追い上げられて2位から3位に下降したことが注目されがちですが、実はドイツやイギリスにもわずかですが追い上げられている状況です。
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日本のGDPが長年停滞している原因
日本のGDPが他国と比較して停滞しているのは、バブル経済から相対的に後退している点が大きな理由です。
約30年も停滞したにもかかわらず世界3位のGDPを維持しているというのは、他国からすると脅威的な状況です。
GDP3位を維持できたのは、経済的な底力の他にも1億人を超える豊富な人口が大きく影響しています。
人口が多ければ一人当たりが生み出す価値が低くても、GDPの影響は小さく抑えることが出来ます。
中国が世界2位のGDPなのに先進国と見なされない理由は、一人当たりのGDPの低さが関係しています。
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日本の人口はドイツ、イギリス、フランスなどのヨーロッパ先進国に比べると非常に多くなっています。
日本のGDPが下落ではなく停滞しているのは、むしろ実情よりも良い傾向である可能性があります。
バブル崩壊前は実力以上に日本経済が伸びていた?
日本は第二次世界大戦後から、世界的に見ても人口の多い国でした。前述の通り、GDP2位を長年維持できたのは人口の多さが大きく関係していると考えられます。
では、日本がGDPで2~3位を維持しているのは、純粋な実力ではないのでしょうか?
確かに高度経済成長期以降は、ハイテクな工業製品を多数生み出し、輸出市場でも大きな存在感を示してきました。
ただし、現在は他の国も工業・ITの効率化で高品質の製品を生み出せるようになっており、日本の存在感は年々減少してしまっています。
いち早く工業大国として成長した日本ですが、近年ではその仕組みを模倣した他国が追い付いてきたのが相対的にシェアを落とす要因となりました。
日本経済の実態はGDP以上にヤバい?2021年現在状況
GDPだけを見ると、日本は世界の中でも有数の豊かな国という印象を受けます。
ただし、専門家の中には日本経済の実態はGDPで見える部分以上にヤバいという専門家も多く存在します。
いったい、どのような点が懸念されているのでしょうか?
貿易収支が減少傾向にある
日本の経済力の強さは貿易収支・経常収支の黒字が下地になっていると言われてきました。
しかし、その中でも貿易収支はとりわけ近年減少傾向にあります。
日本の貿易収支は東日本大震災がきっかけて2012年~2015年に赤字となり、その後も大きな黒字は見込めていません。
多くのものを輸入で得ている日本は、貿易収支の悪化がそのまま経済への打撃に繋がってまいます。
経常収支も同様のタイミングで、大きく減少しています。
経常収支が大きく減少して赤字になると、財政赤字を抱える政府がデフォルトに陥るリスクが高まります。
投資リスクを抱えている
貿易赤字が減少したことで、日本の経常収支は投資・金融によるものの割合が大きくなりました。
外国や企業への融資などが2021年現在の日本の収支の中心といっても過言ではありません。
投資にはリスクが付き物で、米国株の下落や企業価値の下落が国内の経済に直接影響するリスクは十分にあります。
政治主導からの体質変化が求められる
これまでの日本は、施設の設立やイベントの実施は国や自治体からの補助金ありきで進められていました。
しかし、GDPの減少によって政府が補助金に捻出できる金額も少なくなってくれば、クラウドファンディングなどの民間投資を積極的に活用する必要があります。
その他にも、日本は政府主導の経済政策が充実していると言われますが、医療や教育、介護などのサービスは将来的には同様のものを受けられなくなるかもしれません。
GDPよりも国際的な存在感が重要
日本のGDPは確かに下降気味ですが、GDPの増減がダイレクトに国力へ影響するという訳でもありません。
例えば、2021年のイギリスGDPはインド、フランスに次いで世界7位ですが、ロンドンを中心とする金融市場は世界有数の力を持っています。
GDPの順位よりも、いかに国際社会へ存在感を発揮できているかが、国力を測る実質的な指標となりえます。
日本経済が長年停滞していた事実は、GDPの順位よりも国際社会での存在感の薄れという大きなリスクに繋がってしまっています。
ここを改善するために、日本はどのような方針で進むべきか考える必要があるでしょう。