ナスダック指数はアメリカの代表的な株価指数の1つで、最近では投資家からの注目度が増している指標でもあります。
IT企業・ベンチャー企業を中心として構成されている株式市場で、 Google、Microsoftといった巨大企業も参画しています。
社会的知名度が高く安定した基盤を持つ大企業が中心のNYダウとは対照的に、勢いのあるITベンチャーが中心のナスダックは情報技術が発展するのに合わせて、経済の中心的な存在になると考えられています。
今回はナスダック指数の基本的な内容から今後の見通しまで詳しく解説していきます。
【2021年最新】米ドル円の今後の見通しはどうなる?5年後の変動予想やFX各社などの最新予想を解説
※本ページにはPRが含まれます。
このページのもくじ
ナスダック指数の仕組み
ナスダック指数と呼ばれるものには、ナスダック総合指数とナスダック100指数の2通りの指標があります。
ナスダック総合指数とナスダック100指数の違いは、指数を算出する方法にあります。
- ナスダック総合指数:ナスダック上場の全銘柄の時価総額加重平均値
- ナスダック100指数:ナスダック上場のうち金融銘柄を除く時価総額上位100社の時価総額加重平均値
ITベンチャーで構成される要素がより強いのがナスダック100指数となります。
なお、時価総額加重平均とは、組入銘柄の時価総額合計を基準時点の時価総額合計で割ることで算出される指数のことです。
時価総額ランキング(2021/07/21) | |
---|---|
順位 | 会社名 |
1位 | Apple Inc |
2位 | Microsoft Corp |
3位 | Amazon.com Inc |
4位 | Alphabet Inc |
5位 | Facebook Inc |
6位 | Tesla Inc |
7位 | Alphabet Inc |
8位 | NVIDIA Corp |
9位 | PayPal Holdings Inc |
10位 | Adobe Inc |
【引用】Slickcharts「Nasdaq 100 Companies」2021/07/21
ナスダックの構成銘柄ではアップル社が時価総額世界1位を長い間獲得しています。
その他にも、ハイテク企業と言われるメガIT企業が上位を独占しています。
また、上位にはいませんが日本からも任天堂、日産自動車、東京海上ホールディングスなどがナスダック市場に上場しています。
FXの経済指標の見方とは?6つの重要指標の読み方と取引に活用する方法をわかりやすく解説
ナスダック市場の規模
ナスダック市場の合計時価総額を他の市場と比較すると、以下のようになります。
ナスダック | 1,179兆円 |
---|---|
ニューヨーク証券取引所 | 2,680兆円 |
東京証券取引所 | 693兆円 |
東京証券取引所の一部・二部から全ての部門を含む合計額よりもナスダックのほうが大きくなっています。
ナスダック指数と他の株価指数を比較
前述の通り、ナスダックは勢いのあるIT・ハイテク企業から構成されているのが大きな魅力です。
ナスダックの特徴と他の代表的な株価指数を比較すると、以下のようになります。
NYダウ | 全銘柄の平均値 | 30銘柄 | 最も古い株価指数 |
---|---|---|---|
S&P500 | 加重平均 | 500銘柄 | 米国株式市場の動向把握に用いる |
ナスダック総合 | 加重平均 | 3,000銘柄 | ハイテク関連やインターネット関連の大まかな動向把握に用いる |
ナスダック100 | 加重平均 | 100銘柄 | ハイテク関連やインターネット関連に絞った動向把握に用いる |
日経平均 | 全銘柄の平均値 | 225銘柄 | 日本の株価指数の中で最も注目を集める |
NYダウは歴史や構成銘柄の権威性などから、米国経済を表す最も重要な指数と言われています。
【2021年最新】NYダウの今後の見通しはどうなる?過去1年間の推移と2021年以降の予想を分かりやすく解説
ただ、今後の市場見通しを考えると、ナスダックにより注目している専門家も多いです。
また、ナスダックが加重平均で指数を算出するのに対し、NYダウと日経平均は単純な全銘柄の平均値で指数を算出しています。
2020年から2021年現在までのナスダック指数の推移
上記は2020年7月~2021年7月のナスダック指数の推移です。
上記の通り全体的に右肩上がりを見せていますが、新型コロナウィルスの影響により期間中は様々な変動がありました。
ここからは、複数の観点から推移を見ていきましょう。
新型コロナウィルスの影響
2020年3月~4月時点で、ナスダック指数は大幅な下落を起こしています。
2020年2月の最高値と3月の再底値を比較すると、―28%という非常に大きな混乱だったことが分かります。
ただし、2020年に欧米で新型コロナウィルスの感染拡大が報道されてから約1か月で底値を記録して上昇推移に転換したのは、ある意味ではナスダックの強さを表しています。
コロナショックの落ち込みは2020年6月で完全に回復
米連邦準備制度理事会(FRB)は、2020年3月から景気回復のために下記の施策を打ち出しました。
- FF金利の誘導目標を50bp引き下げ
- 政策金利を0近くまで引き下げ
- 19 9カ国と通貨スワップ協定を締結
- 無制限の量的緩和を決定
こうした強力な施策の影響もあり、ナスダック指数は6月時点で下落前の水準を超えました。
また、国内だけでなく世界中で同様の金融緩和がおこなわれており、余ったお金がナスダック市場に流れ込んだことで急回復を見せたという見方が強いです。
2020年6月以降も上昇推移が止まらない
2020年6月に回復したナスダック指数は、その後2021年7月現在まで上昇傾向が続いています。
特に2020年後半からはワクチン開発のニュースも多く取り上げられるようになり、経済回復の期待感も相まって、バブルのような動きを見せています。
ただし、中には「2020年6月以降の上昇推移はナスダック市場自体の成長に依るもの」とする意見も多く、今後バブル崩壊のリスクがあるのかに関しては、一概に予想することはできません。
見かけでは順調に推移している一方で、今後は決して楽観的な見通しはできません。
ナスダック指数の2021年以降の見通し
ここからは、ナスダック指数は将来的にどのような動きを見せるかの見通しを考えていきます。
新型コロナウィルスが収束に向かったとしても、変動の要因は多数存在するため、投資家は注目していきましょう。
新型コロナ収束後しばらくは現状維持の見通し
2021年7月現在は新型コロナのワクチン開発・摂取が進んでおり、アメリカでは年内で成人全員の摂取完了を目標としています。
ただし、コロナ対策として世界的に実施されている金融緩和が、コロナ収束に合わせて終了するのではないかという見通しもあります。
これに関しては、アメリカ政府は実体経済の回復完了までは金融緩和を維持する方針を表明しています。
市場に金が余る状態が続き、行き場のないマネーがナスダック市場に流れ続けるため、しばらくは現在の上昇推移が続くと考えられます。
バイデン政権の増税政策による悪影響
バイデン政権は富裕層や法人に対しての増税を計画しており、ナスダック市場にとっては中期的なリスクとなります。
政策的に実体経済の回復前に増税がおこなわれることはありませんが、増税政策が今後打ち出されるリスクは十分考えられます。
バイデン政権で計画される増税は比較的強力なもので、DGP成長率が増税後に1.6%減少するという見通しも立てられています。
アメリカ経済が全体的に縮小される可能性もあるので注意が必要です。
米中対立で相対的な価値が下がる
ナスダック市場の価値は、アメリカが現在の世界経済の中でワントップの地位を築いていることが大きく影響しています。
しかし、現在は中国経済が急発展している状況で、2030年頃にアメリカと中国のGDPが逆転すると考えられています。
それでも超大国としてのアメリカの権威は無くなりませんが、相対的な価値が下がりアメリカの株式市場が根本から変わる可能性があります。
ナスダック指数は中長期的なリスクに注意
現在は上昇傾向を続けているナスダック指数ですが、中長期的には複数のリスクがあり、楽観的な見通しが100%出来る訳ではありません。
現在の高騰に関してもバブルではないかという指摘がある通り、短期的に崩壊するリスクも十分あります。
ナスダック指数の不安定要素を把握し、今後の推移を注視しておきましょう。