カテゴリー
FX税金

FXの法人化で本当に節税できる?会社設立の効果と起業タイミング・注意点を徹底解説

FX取引で大きな収入を得た場合、節税対策の一環で起業を検討する方も多いです。

法人化は節税効果が見込めるだけでなく、もっと大きな資金を用いて取引をしたい方にもおすすめです。

専業トレーダーの多くが興味を持つ法人化ですが、手続きが難しい上に、リスクが増える場合もあるので注意が必要です。

今回は、FX投資を法人化するメリット・デメリットと、起業すべきタイミングについて分かりやすく解説していきます。

FXの税金はいくら支払う?課税額の計算方法・確定申告の必要条件と申告の流れを解説

※本ページにはPRが含まれます。

FX投資を法人化するメリット

個人事業主が法人化することを、法人成りなどと呼びます。

個人事業主と法人では支払う税金の種類や適用される取引ルールが異なります。

より大きな利益を目指すなら法人化がおすすめです。

ここからは、FX投資を法人化するメリットについて、1つずつ見ていきましょう。

最大100倍のレバレッジをかけられるみんなのFXの法人口座レバレッジ

出典:みんなのFX「法人口座レバレッジ一覧」

FXは個人の口座と法人用口座に分けられており、最大100倍程度のレバレッジが認められています。※FX会社によって異なる。

法人化によって個人よりも大きな利益を狙うことができるので、よりハイレベルな取引に挑戦したい方にはおすすめです。

ただし、2015年に起こったスイスフランショックにより、翌年の2016年以降は法人FXにも以下のレバレッジ規制が設定されています。

  • 1週間ごとに見直しをおこなって証拠金率を計算する
  • 証拠金維持率が100%を切ったら不足額の預託が必要

通貨ペアごとに為替リスク想定比率が設定されており、この値によってレバレッジの最大値が変化します。

ドル円(1ドル110円)の為替リスク想定比率が1.5%の場合、レバレッジの計算は以下のようにおこないます。

  • 取引額=110円×1万通貨=110万円
  • 必要証拠金=110万円÷1.5%=約7,333万円
  • 証拠金率=7,333万円÷110万円×100=約66.6%

上記の場合、レバレッジは最大66.6%となります。

2021年現在は相場の変動状況によっては、必ずしも高レバレッジをかけることはできないので注意しましょう。

家族間で所得を分散できる

会社を設立したら本人を代表、家族を役員とするケースが多いです。

この場合、家族への利益分散は給与の支給と見なされて正当化されます。

  • 代表取締役:年1,000万円
  • 代表取締役:年500万円/妻:年500万円

例えば、FX取引で得た1,000万円の収益を妻と等分した場合、本人(代表)が支払う税金は半分になります。

更に、妻には給与所得控除(65~220 万円)が適用されるので効果は大きくなります。

個人事業主の場合も、家族(配偶者や親族で納税者と同一生計で暮らしている者)を「事業専従者」として給与を支払うことはできますが、会社を設立したほうが制限が緩やかで分散しやすいです。

相続税対策になる

FXで稼いだ収益は法人の保有資産となり、相続税の課税対象外になります。

税負担が大幅に軽減されるので、高齢で将来が不安なトレーダーにおすすめです。

また、FXはポジションを保有したままトレーダーが無くなった場合、死亡日の最終価格で相続税評価をするという独特の制度があります。

日の途中で決済をおこなう予定だったはずが途中で亡くなり、最終的にロスカットを受けた場合も損失は引き継がれてしまうので非常に危険です。

こうしたリスクを回避するためにも、法人化はおすすめです。

決算期を自由に決められる

個人のトレーダーは1月~12月の損益を確定申告しますが、法人の場合は決算期を自由に決めることができます。

FX取引は毎年同じタイミングに利益が発生する訳ではなく、相場の変化に応じて流動的に損益が発生します。

思わぬ損益が出た時に決算期を自由に決めて節税対策が出来る分、法人のほうがお得に取引可能です。

他団体との提携などを実施しやすい

個人の専業トレーダーは社会的には無職の扱いになりますが、法人化をすると会社の代表取締役となります。

他の団体との提携や事業展開などが非常にやりやすくなり、新たな観点からFX取引を進めることが出来るようになります。

FX投資で会社設立をする流れ

  • 定款の作成・認証
  • 資本金の払い込み
  • 登記申請
  • 役所や税務署に届出をする
  • 法人名義の銀行口座を開設
  • 法人名義のFX口座を開設

会社設立の流れは、基本的に上記の6ステップとなります。

特別な資格などは必要ありませんが、個人が一から手続きをおこなうには煩雑すぎる部分もあります。

設立後のことも見越して、税理士に設立手続きの依頼と顧問契約をおこなうのも一つの手です。

ここからは、手続きの内容を1つずつ紹介していきます。

➀定款の作成・認証

株式会社を設立するためには、定款(会社を運営していく上での基本的規則)を作成して公証役場で認証してもらう必要があります。

資格を持つ公証人は役場へ常にいるとは限らないので、事前に訪問日時を予約しておき、スケジュールを調整してもらいましょう。

なお、合同会社を設立する場合は定款の作成・認証は不要です。

②資本金の払い込み

設立事項で定めた資本金の金額を、所定の銀行口座に払い込む手続きが必要です。

まず発起人個人の銀行口座を用意した上で資本金を振り込み、払込証明書を作成した上で通帳コピーと合わせて提出をします。

払込証明書には会社の実印(代表者の実印)が必要なので注意しましょう。

また、資本金の払い込みは必ず定款の認証日より後に実施しなければいけません。

③登記申請

商号や本社所在地、代表者氏名や事業目的を法務局に登録し、一般に開示可能とする手続きを登記と言います。

申請のためには、登記必要書類と登記申請書の用意が必要です。

法務局へ登記申請をすると7~10日ほどで登記が完了されます。

登記申請は所定の様式と少しでも形式が異なると受理されないので、税理士に依頼するのがおすすめです。

ここまでの手続きで、実質的な会社設立の手続きは完了です。

④役所や税務署に届出をする

会社設立が完了したら、まず税務署に以下の書類を提出します。

  • 法人設立届出書
  • 青色申告の承認申請書
  • 給与支払い事務所等の開設届出書
  • 源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書
  • 棚卸資産の評価方法の届出書
  • 減価償却資産の償却方法の届出書

また、管轄の自治体に以下の書類を届け出する必要があります。

  • 法人設立届出書
  • 定款の写し
  • 登記事項証明書

自治体に届け出をする場合、都道府県の窓口は法人事業課(住民税課)、市町村の窓口は法人住民税課になります。

⑤法人名義の銀行口座を開設

法人名義の銀行口座は、代表者が自ら任意の金融機関に赴いて、手続きをおこなう必要があります。

手続きの方法に関しては、金融機関ごとに定められたルールを参照してください。

⑥法人名義のFX口座を開設

最後に、法人名義のFX口座開設手続きをおこない、銀行口座に会社名義の口座を設定します。

会社設立すべきタイミングの目安

法人化は手続きに手間がかかる上に管理・維持も面倒なので、設立のタイミングを見極めて起業する必要があります。

FXの法人化に最適な2つのタイミングを紹介します。

売上高が年間900万円を超えたタイミング

個人でFX取引をおこなう場合、課税額は累進課税によって計算されます。

課税総所得額税率控除額
330万円超695万円以下20%427,500円
695万円超900万円以下23%636,000円
900万円超1,800万円以下33%1,536,000円
18,000,000 円以上40%2,796,000円

FX取引で利益が900万円を超えた時の税率は累進課税で約33%となります。

法人税は一律で税率23.2%なので、このタイミングで会社を設立するのがおすすめです。

事業所得が年間600万円を超えたタイミング

売上高が年間900万円を超えなくても、節税効果を考慮すると年間600万円を超えたタイミングで法人化をすれば十分な節税効果が見込めます。

ただ、年間600万円を超えても事業の状況によっては大した効果が見込めないケースもあるので、税理士などの判断を仰ぐ必要があります。

FX投資を法人化する時の注意点

FXで法人化をする際は、少なからずデメリットも存在します。

会社設立時にチェックすべきリスクを抑えておきましょう。

会社設立には20万円ほどの費用がかかる

株式会社の設立では、登録免許税が15万円かかる他、株式会社なら別途で5万円ほどの定款認証費用の支払いが必要です。

その他の諸費用も含めると、約24万円の費用を支払わなければいけません。

合同会社・合資会社なら10万円ほどの設立費用で済みますが、FX会社によっては法人口座の開設が出来ないケースもあるので注意しましょう。

法人の資金は自由に使えない

個人事業主なら事業資金を自由に使用できますが、法人の場合は社長が個人的に会社のお金を引き出すのは税務上否認されます。

役員報酬として否認された部分は、法人税と所得税がダブルで課税されてしまいます。

法人住民税を含む様々なコストが発生

法人化をすることで、年間7万円程度の法人住民税が課されます。

その他、顧問契約を結ぶ税理士への月額費用や決済処理の費用など、様々な細かい費用が発生します。

損益に関わらず一定の費用が毎月発生するため、個人事業主の時よりも高い利益を獲得できないと維持が難しくなります。

会社設立で考えるべきポイント

法人化を検討する場合は、どんな会社を設立するか考えておくことをおすすめします。

ここからは、会社設立時、特にチェックしたいポイントを紹介します。

会社の形態

会社の形態は株式会社、合同会社、合資会社など様々な種類があります。

前述の通り、合同会社や合資会社なら設立費用を安く抑えられますが、株式会社しか解説できない法人口座もあるので注意が必要です。

FX会社の基準を満たしていても、銀行の法人口座が設立できない可能性があるので、両方の基準を把握しておきましょう。

事業の目的

事業目的をどのように設定するかも、会社設立では重要になります。

銀行の口座開設審査などでも、事業の目的はしっかりチェックされます。

事業目的が「FX取引」としか記載されていない会社は、果たして周囲から将来性を期待してもらえるか疑問です。

代表取締役自身がFX取引をしている場合、投資助言や各種コンサルティング業なども事業に併記していることが多いです。

すぐに事業として実施できない場合も、将来的に実施を予定している事業なら記載して良いルールなので、10個程度を目安に記載しておきましょう。

本店所在地

自宅の一画を事務所代わりにして法人化するのが最も手っ取り早いですが、賃貸物件の場合は引っ越し時にリスクがあるので注意が必要です。

※オーナー(大家)の承諾があれば、賃貸物件を所在地にするのも不可能ではありません。

持ち家の自宅を本店所在地に設定する場合は周囲に情報が洩れるリスクもあるので、リスクを感じる場合はレンタルオフィスなどの設立も検討してみましょう。

会社設立は慎重に実施しよう

会社設立は節税対策になりますが、ランニングコストが増えるので、求められる利益は個人の時よりも高くなります。

自分のリズムで気ままに取引を進めたい方は、法人化があまりおすすめできないこともあります。

自分の正確やトレードスタイルとも照らし合わせながら、慎重に決めていきましょう。

関連記事